東京地方裁判所 昭和61年(ワ)7603号 判決
愛媛県松山市馬木町七〇〇番地
原告
井関農機株式会社
右代表者代表取締役
堀江行而
右訴訟代理人弁護士
安原正之
同
佐藤治隆
同
小林郁夫
右輔佐人弁理士
新関宏太郎
同
新可関淳一郎
同
新関千秋
東京都千代田区外神田四丁目七番二号
被告
株式会社佐竹製作所
右代表者代表取締役
佐竹覚
右訴訟代理人弁護士
柏木薫
右訴訟復代理人弁護士
松浦康治
右輔佐人弁理士
竹本松司
同
湯田浩一
主文
一 原告の請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第一 当事者の求めた裁判
一 原告
1 被告は、別紙物件目録(一)記載の籾玄米選別装置を製造販売してはならない。
2 被告は、右第1項記載の籾玄米選別装置を廃棄せよ。
3 被告は、原告に対し、金三七〇五万四二〇〇円及びこれに対する平成三年一〇月一〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
4 訴訟費用は被告の負担とする。
5 第3項について仮執行宣言。
二 被告
主文同旨
第二 請求原因
一 原告は、籾摺(もみすり)調整装置を含む一般農業機械の製造販売を行って いる農業機械総合メーカーである。
二 原告は、別紙権利目録(一)記載の特許権(以下「第一権利」といい、その発明を「第一発明」という。)を有し、別紙権利目録(二)記載の特許権(以下、この特許権のうち、願書に添附した明細書の特許請求の範囲第2項に記載の発明を「第二発明」といい、それについての特許権を「第二権利」という。)を平成三年一月一九日、存続期間満了まで有していた。
三 右各発明の願書に添附した明細書の特許請求の範囲の記載は、第一発明については、別添公告番号昭五七-四九二七三号特許公報(以下「第一公報」という。)の、第二発明については、別添公告番号昭五一-一六二〇号特許公報(以下「第二公報」という。)の、各該当欄に記載のとおりであり、これらを構成要件に分説すると、次のとおりである。
1 第一発明について
a 傾斜状の選別板を揺動させてその高位側から玄米を、又その低位側から籾を選別して取り出すように構成すると共に、
b この選別板の傾斜角度調節機構を備えている揺動式穀粒選別機において、
c 選別板の上記高位側と低位側における穀粒層を夫々検知できる検知器を選別板の上方に近ずけ、
d これらの検知器からの出力を受ける比較制御部を設けて、
e 上記検知器の夫々の設置位置にて所定の穀粒層が存在し得るように、上記傾斜角度調節機構を調節制御すべくこの比較制御部が構成してあることを特徴とする
f 揺動式穀粒選別機における選別板の傾斜角度自動調節装置。
2 第二発明について
a 脱〓ロール駆動電動機の負荷を感知する負荷変動計と、
b 脱〓ロール間隙調節装置と、
c 負荷変動計が一定以下の電動機負荷を感知したとき脱〓ロール間隙調節装置を脱〓ロール間隙縮少方向に駆動回転するサーボモーターとを備えた籾摺機の
d 負荷変動計とサーボモーターとの間に、
e ホッパー内に籾のきれたとき、シャッターを閉じたとき、ロール展開ハンドルを開いたときの各々の作動に対応して上記サーボモーターの回転が停止されるべくリミットスイッチを、ホッパー、シャッター、ロール展開ハンドルのいずれか一個所又は二個所以上に設けたことを特徴とする
f 籾摺機の安全装置。
四 被告は全自動籾摺装置を製造販売しているが、これは別紙物件目録(一)記載の籾玄米選別装置及び別紙物件目録(二)記載の籾摺装置からなっている(以下別紙物件目録(一)記載の籾玄米選別装置を「被告製品一」といい、別紙物件目録(二)記載の籾摺装置を「被告製品二」といい、両者が組み合わされた全自動籾摺装置を単に「被告製品」ということがある。)。
五 第一権利と被告製品一との対比
1 被告製品一は、
(一) 選別板47は、四角形状で前後及び左右の二方向に傾斜し、側壁52、53、54を立設し、一側を開口して排出側55とする。排出側55は全幅に亘って開口され、その外側に排出口94を形成して排出樋58が設けてあり、排出口94は高位置を玄米取出口59、低位置を籾取出口61、中間位置を混合米取出口60としており、斜上下の揺動作用により、玄米は玄米取出口59に、籾は籾取出口61に排出される。
(二) 角度調節用モーター66にはギヤケース67を介してネジ軸68が連結してあり、ネジ軸68の端部には軸70にその一端を固定したアーム69の他端を連絡し、軸70と軸71とをアーム95によって連絡する。軸70の一端には指針72が設けてあり、角度表示用センサー73で指針72の回動位置を検出するようになっている。
(三) 最上段の選別板47の排出側55には、側壁54の近傍に二個の選別板センサーS2、S3を取り付け、側壁52の近傍に一個の選別板センサーS1を取り付け、選別板センサーS1、S2は選別板47の選別面と面一に、選別板センサーS3は選別板47の選別面より所定量上方に突出させる。
(四) 選別板センサーS1、S2、S3を制御盤65に連結する。
(五) 選別板センサーS1が米粒を検出しないときは、選別板47の傾斜角度が小さくなる方向に角度調節用モーター66が回転し、逆に選別板センサーS2が米粒を検出しないときは、選別板47の傾斜角度が大きくなる方向に角度調節用モーター66が回転し、更に選別板センサーS1、S2がともに米粒を検出し、かつ選別板センサーS3が米粒を検出するときは、選別板47の傾斜角度が小さくなる方向に角度調節用モーター66が回転し、選別板47は選別板センサーS3だけが米粒を検出しない適正な角度に調節される。
(六) 揺動式穀粒選別機における選別板の傾斜角度自動調節装置。
である。
2 右被告製品一の構成(一)ないし(六)は、第一発明の構成要件aないしfをそれぞれ充足し、被告製品一は、第一発明の技術的範囲に属する。
3 被告は、構成要件c、即ち、選別板の上記高位側と低位側における穀粒層を夫々検知できる検知器を選別板の上方に近ずけて設け、構成要件d、即ち、これら検知器からの出力を受ける比較制御部を設けて、構成要件e、即ち、上記検知器の夫々の設置位置にて所定の穀粒層が存在し得るように、上記傾斜角度調節機構を調節制御すべくこの比較制御部が構成してあるとの各要件を充足しないと主張する。
(一) この構成要件cの、「選別板の上方に近ずけて設け」の意味は、「選別板1aの上面に接近した状態で取り付ける」ということである。
本件公報の実施例の図は本件特許発明の一例に過ぎないことはいうまでもなく、かつ第一公報の4欄一六行から二二行の「選別板1aの高位側板11aの附近における穀粒層8hの有無を検知できる高位の検知器9を例えば高位側板11aなどに取付けるなどして設け、又、同じ選別板1aの低位側板12aの附近における穀粒層81の有無を検知できる低位の検知器19を例えば低位側板12aに取付けるなどして設け」の記載、同5欄三行から五行の「検知器9、19の実施例として、例えば光電管を用いて高位側と低位側の穀粒層の有無を検知すれば」の記載、同5欄二〇行から二六行の「したがって選別板1a、1b……上における穀粒の選別作用が正常に行われて、選別板1a、1b……の全面にわたって効率良く選別作業が行われているときは、高位側板11aの附近には玄米が、又、低位側板12aの附近には籾が夫々存在してこれらによって所定厚さの穀粒層8h、81が共に存在することになり」の記載、同5欄三一行から三八行の「これに対して例えば選別板1a、1b……の傾斜角度が大きくなり過ぎるなどの原因によってゆり上げ選別の機能が悪くなり高位側板11aの附近に存在すべき玄米層が低位側に片寄りしてこの附近の検知器9の出力はなく、低位側板12aの附近の検知器19からのみ出力信号があるときには、比較制御部10からは傾斜角度減少の指令が傾斜駆動部13に与えられるので、」の記載等からすると、第一権利は、穀粒層の厚みを測定するものではなく、穀粒層の有無(存在の有無)を測定するものであることは明白である。穀粒層の存在の有無を測定さえすれば第一発明の目的は達成されるものである以上、「上方に近ずけ」の「上方」は、要するに「選別板の上面」と理解すれば、第一権利の内容はすべて理解できる。
第一権利の選別板は、「高位側から玄米を、又、低位側から籾を選別して取出す」(第一公報4欄八行から九行)とあるように、幅方向の全域にわたって穀粒は分布するものであること、右選別板に対する穀粒の供給量は、多くもなく少なくもなくちょうど右のように分布する量を供給しているから、ただ穀粒の有無を検知できる検知器を選別板の高位側と低位側に設けさえすれば、好ましい厚さに調節できる。
即ち、被告製品一の選別面と面一のセンサーS1、S2は「選別板の上方に近づけた」構成そのものであり、穀粒さえあれば構わないという制御は、選別板1aには決められた量の穀粒しか供給されないという前提があることを考慮すると、まさに第一発明でいう「傾斜方向全域にわたる好ましい厚さに穀粒層を形成する」ものである。そして、およそ穀物の選別装置において穀物を供給するときに装置の能力に見合った穀物を供給することは、当業技術者の技術常識であるから、決められた量の穀物を供給することを前提として被告製品一の技術内容を解釈することは当然の結果である。
(二) 被告は、被告製品一のセンサーS1、S2はそれら自体が単独でONかOFFだけで角度調節の信号を発するのであるから、センサーS1、S2相互の比較による制御ではないので相違すると主張するが、第一公報中には、右比較制御部10の作用に関し4欄16行ないし39行において、「選別板上における選別作用が正常に行われて高位側及び低位側に穀粒層が共に存在するときには比較制御部10からは指令は出ず、低位側に穀粒が片寄り高位側に穀粒層が存在しないときには、比較制御部10から傾斜駆動部13に傾斜角度減少指令が出される」との趣旨が記載されているように、高位側及び低位側に穀粒層があるときは指令は出ず、低位側に穀粒層があり高位側に穀粒層が存在しないときにのみ指令が出される状態を「比較」と称しているのであり、被告製品一のセンサーS1、S2の作用と第一公報記載の作用とは相違しない。
また、第一発明の構成要件dを被告主張のように限定解釈しなければならない理由はなく、「これら検知器からの出力を受ける比較制御部を設けて」とだけ述べているように、基準電圧を比較すればよいものである。
六 第二発明と被告製品二との対比
1 被告製品二は、
(一) HU-コントロールボックスaのリレーを除いた部分は、CTb、比較器d、論理回路fを有し、CTbは電流計26に表示された電動機23の負荷電流の三〇〇〇分の一に相当する電流を信号として取り出して比較器dに入力させ(負荷電流の検出機能)、比較器dはCTbから入力された電動機23の負荷電流の三〇〇〇分の一に相当する電流と設定器eからの比較の元となる基準値とを比較し(比較機能)、論理回路fは比較器dで比較した結果に基づいてリレーを介してロール間隙調整用モーター25を制御すべく信号を発する(制御機能)という機能を有しており、
(二) ロール間隙調整用モーター25は、その軸端に鎖車30が装着され、チェーン31を介してロール調整軸32の鎖車33を正逆回転可能としており、
(三) 比較器dはCTbから入力された電動機23の負荷電流の三〇〇〇分の一に相当する電流と設定器eからの比較の元となる基準値とを比較した結果、CTbから入力された電動機23の負荷電流の方が設定器eからの比較の元となる基準値より小さいときには、論理回路fによりリレーを閉じ、二〇〇V電源により、ロール間隙調整用モーター25をロール間隙縮小方向に回転させ、
(四) レベル計34は、HU-コントロールボックスaの制御基板cの論理回路gに接続され、レベル計34で接続もしくは切断される一二V直流電流がそこで処理された後、論理回路fを通って論理回路fとロール間隙調整用モーター25の間の回路を開閉するリレーに接続されて該リレーを開閉し、ロール間隙調整用モーター25を停止させ、
(五) 籾摺機2の供給用の漏斗11にはレベル計34が設けられ、漏斗11内の籾米がなくなって、レベル計34が籾米のないことを検知したときは、論理回路gを介し論理回路fを通って、一二V直流電源で前記リレーを開いてロール間隙調整用モーター25を設定時間(約三秒)だけロール開方向に回転させて停止(ステップ7、8、9)させる、
(六) 籾摺機の安全装置
である。
2 被告製品二の構成(一)ないし(六)は、それぞれ第二発明の構成要件aないしfを充足する。よって、被告製品二は、第二発明の技術的範囲に属する。
3 被告は、HU-コントロールボックスaのリレーを除いた部分が、構成要件aの負荷変動計に該当することを否定する。
第二公報の特許請求の範囲の記載によれば、第二発明の負荷変動計の要件について、脱〓ロール駆動電動機の負荷を感知し(検出機能)、一定以下の電動機負荷を感知し(比較機能)、(一定以下の電動機負荷を感知したとき)脱〓ロール間隙調節装置を脱〓ロール間隙縮少方向に駆動させる機能(制御機能)を備えているものであることが記載されている。しかるところ被告製品二は、制御基板cの内部に比較器dと設定ダイヤルに連なる設定器eと論理回路fと一二V電源で作動するレベル計34に連なる論理回路gが設けられ、HU-コントロールボックスa内に電流計26とCTbと二〇〇V電源に連なるリレーが設けられた構成であり、その作用は、電動機23に流れる電流は、電流計26に表示され、その電流の三〇〇〇分の一に相当する電流を信号として取り出して比較器dに入力させ、比較器d内においては入力した電動機23の負荷電流と設定器eからの基準値とを比較し、電動機23の負荷電流の方が基準値より小さいときは論理回路fによりロール間隙調整用モーター25をロール間隙縮小方向に回転させるべく信号を発して、ロール間隙調整用モーター25をロール間隙縮小方向に駆動させて、籾摺するというものである。そうしてみると被告製品二のうち、CTbは電流計26に表示された電動機23の負荷電流の三〇〇〇分の一に相当する電流を信号として取り出して比較器dに入力させるから、負荷電流の検出機能を有しており、比較器dはCTbから入力された電動機23の三〇〇〇分の一に相当する電流と設定器eからの比較の元となる基準値とを比較するから比較機能を有しており、論理回路fは比較器dで比較した結果CTbから入力された電動機23の負荷電流の方が設定器eからの比較の元となる基準値より小さいときはロール間隙調整用モーター25をロール間隙縮小方向に回転させる制御信号を出すので、第二発明の特許請求の範囲に記載された「負荷変動計」の全ての要件を満たす。
被告は、負荷変動計の制御機能とは、単に信号を出すのみでは不十分であって、サーボモーターを実際に回転駆動させるための駆動をも要すると主張し、リレーも含めるべきであるというが、リレーは機能を伝達させるための一つの手段にすぎず、そのような必要はない。
4 被告は、第三の二2(二)のように主張する。なるほど一二V直流電流は、論理回路fを通ってリレーに接続されているから論理回路fを通ることになるが、各種の処理がなされるのは論理回路gであり、論理回路fは、処理後の情報が単に送られるだけである。仮に、被告製品二の構成が被告の主張するとおり論理回路fでも情報が処理されるものであったとしても、被告製品二の論理回路fは、比較器dからの出力に基づいてロール間隙調整用モーター25をロール間隙縮小方向に回転させる信号を発する「負荷変動計」としての制御機能部分Aと、右制御機能部分Aとは異なるレベル計34のオン.オフの情報が入った後ロール間隙調整用モーター25を何秒間か回転させることのできる処理機能部分Bの二通りの部分を有しているということになるだけであって、右処理機能部分Bは、負荷変動計の要件である制御機能部分Aとは全く関係のない部分であるから、この部分をレベル計34のオン・オフの情報が通って何らかの処理がなされたとしても、負荷変動計としての論理回路fの制御機能部分Aには何の影響もないので、第二発明の「リミットスイッチ」に相当するものは、レベル計34、論理回路g、論理回路fの一部の右処理機能部分B、リレーであり、レベル計34の情報で開閉するリレーが、論理回路fの制御機能部分Aとロール間隙調整用モーター25との間に存在しているのであるから、被告製品二は、第二発明の構成要件dを充足する。
5 被告は、第三の二2(三)(1)、(2)のように主張するが、第二発明の要件eは、〈1〉ホッパー1内に籾のきれたとき、〈2〉シヤッター2を閉じたとき、〈3〉ロール展開ハンドル48を開いたとき、各々の作動に対応して上記サーボモーター32の回転が停止されるべくリミットスイッチ45、46、47を、ホッパー1、シヤッター2、ロール展開ハンドル48のいずれか一個所又は二個所以上に設けたことと記載されているように、右〈1〉、〈2〉、〈3〉の現象があったときサーボモーター32の回転が停止されるリミットスイッチ45、46、47を、いずれか一個所に設けるという意味である。いずれか一個所に設けるのであるから、右〈1〉、〈2〉、〈3〉の内、〈1〉のみのとき、〈2〉のみのとき、〈3〉のみのときの場合があることは当然である。
6 被告は、第三の二2(三)(3)のように主張するが、被告製品二のロール間隙調整用モーター25もいつまでも開く方向に回転しているものではなく、少しだけ回ってすぐ停止するものであるから、ホッパー内に籾がきれたときロール間隙調整用のサーボモーター32が停止するという第二発明の要件eを充足している。
被告は、作業再開時ロール16、17の接触を防止できる効果がある旨主張しているが、右構成を付加することにより、逆に作業再開時に適正なロール間隙に再度調節する必要が生じ、作業再開が遅れるという欠点もあり、さして重要な技術的事項ではない。
七 被告による被告製品の製造販売と原告の損害
1 被告は、昭和五七年四月一日から平成元年三月三一日までの間、被告製品一を、一台当たり二一一万円の割合で、合計六三台製造販売した。
これによる原告の損害は、六三台×二一一万円×特許実施料率三%=三九八万七九〇〇円である。
2 被告は、被告製品二を、昭和五七年度から昭和六〇年度までの間に一台当たり二六六万円の割合で一六四台、昭和六一年度から昭和六二年度までの間は一台当たり二八一万円の割合で一三四台、昭和六三年度から平成元年度までは一台当たり二八一万円の割合で一〇三台、製造販売した。
これによる原告の損害は、昭和五七年度から昭和六〇年度までの間の分は、一六四台×二六六万円×特許実施料率三%=一三〇八万七二〇〇円、昭和六一年度から昭和六二年度までの間の分は、一三四台×二八一万円×特許実施料率三%=一一二九万六二〇〇円であり、昭和六三年度から平成元年度までの間の分は、一〇三台×二八一万円×特許実施料率三%=八六八万二九〇〇円で、これらの合計は三三〇六万六三〇〇円である。
3 右1及び2の総計は三七〇五万四二〇〇円となる。
八 よって、原告は、被告に対し、第一権利に基づき、被告製品一の製造販売の差止めと廃棄を求めるとともに、第一権利を侵害する被告製品一、第二権利を侵害する被告製品二の各製造販売による損害金として合計三七〇五万四二〇〇円及び不法行為の日以後である平成三年一〇月一〇日から支払済みに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
第三 請求原因に対する認否及び被告の主張
一 請求原因一ないし四は認める。
二 請求原因五、六は、請求原因五1、六1のように被告製品を分説できることは認め、その余は否認する。
1 第一権利について
(一) 被告製品一は、第一発明の構成要件c及びeを欠く。
(1) 構成要件cのうち、「検知器を選別板の上方に近ずけて設け」とは、「検知器を、選別板の上方であって、且つ、所定の穀粒層の厚さを検出できる距離に選別板に近づけた位置に設け」という意味に解されるべきである。
(2) 第一権利が出願された昭和五一年三月五日当時、当業者間における技術水準からすれば、少なくとも選別板の揺上側及び揺下側に単に穀物の有無のみを検出する装置を設け、それらの信号により選別板の傾斜角度を自動制御するという程度の技術は、公知のものであった。
原告は第一権利の出願経過において、選別板の傾斜角度自動調節のために何をどのように検出すべきかという課題の解決に関し、右の公知技術水準を上回るものであるとして、選別板面上における穀粒層の厚さを検出するという構成及びこれによる作用効果を強調した。
例えば異議手続きにおいて、原告は「選別作業において選別作業を効率よく行うには、盤面全体が選別作用に関与しているように、即ち、盤面の夫々の箇所において、玄米、籾、混合米のひろがりと層の厚さが適宜な望ましいものであるように、制御されねばならない」と説明して、盤面上での穀物のひろがり(すなわち穀粒の有無)のみならず層の厚さが適正であることの必要性を強調し、更に「本願発明では、選別板の板面の傾斜方向全域にわたって夫々の検知器によって、分散選別の状態を検知できるので、板面全体にわたって玄米、籾等を夫々、望ましい厚さに分散できる」とし、穀物を板面上に望ましい厚さに分散できることは、従来技術にない作用効果であると主張している。
(3) 以上のような技術的背景及び第一権利の作用効果に鑑みれば、第一権利の検知器は、選別板の上方であって、所定の穀粒層の厚さを検出できる程度に選別板に近づけた位置に設ける必要があり、したがって「検知器を選別板の上方に近ずけて設け」とは、「検知器を、選別板の上方であって、且つ、所定の穀粒層の厚さを検出できる距離に選別板に近づけた位置に設け」という意味に解されるべきである。
(4) 構成要件eの「所定の穀粒層」とは、当該選別装置において選別板面上に存在すべき一定の厚さの穀粒の層を意味するが(一粒の厚さでも構わない)、一定の厚さのあることが要件であるから、このような観点を欠く「穀粒の有無」とは異なる。
(5) これに対し被告製品一の選別板の高位側においては、センサーS1は、選別板と面一に設けられているのであるから、「撰別板の上方に近ずけて設け」という構成要件cを備えていない。即ち、センサーS1は、選別板の板面と面一に設置されていて、選別板の上方に設けられているわけではなく、選別板に近づけて設けられているものでもない。このような構成のため、センサーS1が検出するのは、「穀粒の有無」であって、「所定の穀粒層」ではない。従って被告製品一は、「上記検知器のそれぞれの設置位置にて所定の穀粒層が存在しうるように」という構成要件eも備えていない。
(6) 右の構成の相違により、被告製品一は、第一権利が奏する「選別板上の傾斜方向全域にわたって好ましい厚さに穀粒層を形成しながら効率の良い選別動作が自動的に制御されて行なわれる」(第一公報6欄二二行から二五行)という作用効果を奏しない。被告製品一においては、選別板47の低位側における所定の穀粒層の形成と選別板47への穀粒の供給量との関係で選別板の全域にわたって望ましい穀粒層が形成されるように構成されているのであって、選別板47の高位側に所定の穀粒層が存在しうるように角度調節機構を調節制御するようになっていないため、被告製品一は第一権利とは角度調節の作用効果を異にする。
その余の作用効果の相違としては、被告製品一のセンサーS1、S2は、選別板と面一に設置されているという第一権利の具備しない構成を有しているため、その表面上を穀粒が流動することによって米ヌカ等の検出器への付着が防止され、常に正常に機能しうるという第一権利にはみられない効果がある。
(二) 被告製品一は、第一発明の構成要件dを欠く。
構成要件dの「比較制御部」とは、第一公報から明らかなとおり、選別板1aの高位側11aの付近の検知器9からの信号と低位側12a付近の検知器19からの信号とを比較するものである。これに対し、被告製品一は、三個のセンサーS1、S2、S3を備えているが、物件目録(一)から明らかなように、選別板47の傾斜高位側のセンサーS1からの信号と傾斜低位側のセンサーS2からの信号とは比較されることはない。即ち、センサーS1、S2はそれら自体が単独にONか否かだけで角度調節の信号を発するのであって、それらセンサーS1、S2相互の比較によって角度調節の信号を発するものではない。したがって、被告製品一は構成要件dを充足しない。
なお、原告は、被告製品一のセンサーS1、S2も別途定められている基準電圧と比較して作動するから、これが「比較制御部」に該当すると主張する。しかし、センサーS1やS2からの信号を基準電圧と比較することは、高位側の検知器からの信号と低位側の検知器からの信号とを比較していることではないので、第一権利のいう「比較制御部」には該当しない。
2 第二権利について
(一) 被告製品二は第二発明の構成要件a、c、dを欠く。
(1) 第二公報の特許請求の範囲の記載によれば、第二発明の「負荷変動計」の要件について、脱〓ロール駆動電動機の負荷を感知し(検出機能)、一定以下の電動機負荷を感知し(比較機能)、(一定以下の電動機負荷を感知したとき)脱〓ロール間隙調節装置を脱〓ロール間隙縮小方向に駆動させる機能(制御機能)を備えているものであることが記載されていることは認める。
しかし、第二権利の「負荷変動計」とは、それ自体では特定の技術内容を表現した言葉ではなく、また特許請求の範囲の記載からも、右機能を有すること以外にその構成が特定されたものでもない。このように機能的、抽象的に表現されている構成要件については、明細書及び図面において具体的な構成として示された技術思想に基づいて、明確な内容を有する構成として解釈されるべきである。そして、特許請求の範囲において「計」という言葉が用いられていることからすると、「数量を計る装置」(広辞宛)という程度の限定は付されてしかるべきであり、「負荷変動計」とは、「負荷の変動を計る装置」ということになって、これを基に、特許請求の範囲記載の機能を第二公報3欄三二行から四〇行に記載されている内容や図面に示されているような具体的な構成で実現したものと解すべきである。
(2) 原告は、被告製品二のHU-コントロールボックスa全体からリレーを除いた部分が第二発明の「負荷変動計」に相当すると主張するが、負荷変動計が備えているべき「制御機能」とは、一定以下の電動機負荷を感知したときロール間隙調整用モーターを間隙縮小方向に駆動させる機能であるところ、HU-コントロールボックスaからリレーを除くと、右の制御機能のうち、ロール間隙調整用モーターを間隙縮小方向に駆動させる機能を実現することができない。原告は、負荷変動計の制御機能は、ロール間隙調整用モーターを制御する信号を発することが可能でありさえすればよいと主張するが、第二発明の構成要件中には、「負荷変動計が一定以下の電動機負荷を感知したとき脱〓ロール間隙調整用モーターを脱〓ロール間隙縮小方向に駆動回転するサーボモーター」と明記されているのであるから、負荷変動計は、電動機負荷が一定以下の場合にはサーボモーターを脱〓ロール間隙縮小方向に駆動回転させるための構成をも要するもので、単に制御信号を発するだけでは十分ではない。
(二) 被告製品二は第二発明の構成要件dを欠く。
原告は、第二発明のリミットスイッチに相当するのは、被告製品二のレベル計34、論理回路g及びリレーであると主張する。
しかし、被告製品二においては、レベル計34がそれ自体スイッチ機構を備えていて籾米の有無に応じて一二V電源を接続もしくは切断し、この一二V電源の接続もしくは切断の信号が論理回路gに送られ、そこで一定の処理がなされたのち、論理回路fで他の信号との関係で処理されてリレーの開閉を行っている。レベル計34が第二発明のリミットスイッチに対応する。そうしてみると、被告製品は、第二発明の構成要件dを欠く。
また、仮に被告製品二のレベル計34、論理回路g及びリレーが第二発明の「リミットスイッチ」に相当するとしても、この場合リミットスイッチの構成に論理回路fが含まれるというべきであるから、論理回路fが共用されることになり、同様に第二発明の構成要件dを充足しない。
(三) 被告製品二は第二発明の構成要件eを欠く。
(1) 構成要件eについて、原告は、〈1〉ホッパー内に籾がきれたとき、〈2〉シャッターを閉じたとき、〈3〉ロール展開ハンドルを開いたときのうちいずれかの場合にのみサーボモーターの回転が停止される構成を具備していればよく、いずれの場合にもサーボモーターの回転が停止される構成を具備する必要はないと主張する。
しかしこの主張に従ったとしても、第二権利の籾摺機にあっては、〈1〉、〈2〉、〈3〉の各々のときがあることを要件としているのであるから、〈1〉、〈2〉、〈3〉の各々の作動をもたらす構成をいずれも具備していなければならない。その上で、これらの作動のうち少なくとも一つの作動に対応してサーボモーターの回転が停止されるというものである。したがって籾摺機にロール展開ハンドルを設けることも構成要件eの内容であると考えられる。ちなみに、第二権利の明細書及び図面のどこを見ても、ロール展開ハンドルを設けない籾摺機については、これを窺わせる記載は全くない。
そうしてみると、ロール展開ハンドルを設けていない被告製品二は、第二権利が対象としている籾摺機には含まれないと解すべきであるから、構成要件eを欠く。
(2) なお原告は構成要件eについて、〈1〉、〈2〉、〈3〉の各々の作動のうち少なくとも一つの作動に対応してサーボモーターの回転が停止されればよいと主張しているが、サーボモーターの停止は、特許請求の範囲の記載からも明らかなように、〈1〉、〈2〉、〈3〉の各々の作動に対応するものであって、〈1〉、〈2〉、〈3〉の作動の少なくとも何れか一つの作動に対応すればよいものではないと解すべきである。そして、「いずれか一個所又は二個所以上に設ける」とは、右〈1〉、〈2〉、〈3〉の作動のそれぞれに対応するリミットスイッチをホッパー、シャッター、ロール展開ハンドルのそれぞれに一個所または二個所以上に設けるという意味であると解される。
ちなみに、被告製品二の籾摺装置にあっては、その構造上、運転中に籾供給シャッターのみを単独に閉じることはできないのであるが、もしこれを何らかの方法で強制的に閉じたとしても、その閉作動を検出してロール間隙調整用モーター25を停止するようにはなっていない。
(3) 次に、構成要件eにあっては、ホッパー内に籾がきれたとき等には、これをリミットスイッチによって検出し、サーボモーターの回転を停止するのに対し、被告製品二の籾摺装置にあっては、物件目録二の記載からも明らかなように、調整タンク8に籾がきれたときは、これをレベル計34で検出し、ロール間隙調整用モーター25を設定された時間ロール開方向に回転させる。即ち、第二権利が、ホッパー内に籾がなくなるとサーボモーターを停止させてロール間隙の調節を全く行わないのに対し、被告製品二は、ロール間隙調整用モーターを停止させることなくロール間隙の調節を行うのであるから、この点においても両者は明らかに相違している。
この構成上の相違は重要であり、第二権利の作用においては、ホッパー内に籾がきれたときにサーボモーターの回転を停止してロール間隙を脱〓作用を行なっていたときと同じ値に保つ(第二公報6欄二八行から三五行)というものであるが、ホッパー内に籾がきれたときにロール間隙の調節を停止してしまうと、その後ホッパー内に籾が供給されてロール間隙の調節が当然作動した場合、籾がホッパー内に供給されてから籾送りロールによって脱〓ロールの間に到達するまでにはある程度時間がかかるため、この到達までの間に脱〓ロールは、その間隙に籾の供給がないまま互いに近づき接触してしまう可能性があるのに対し、被告製品二は、このような問題に対処すべく、調整タンク8に籾がきれてもロール間隙の調節を停止することなく、逆にロール間隙を開方向に調節し、後に籾が調整タンク8に供給されて脱〓ロール16、17に到達するまでの間ロール間隙が閉方向に調節されても、脱〓ロール16、17が閉方向に移動して互いに接触するよりも充分前に、ロール間に籾が供給されるようにしている。
3 以上のとおり、被告製品一、二は、その構成においても作用効果においても、第一発明及び第二発明とは相違し、第一権利及び第二権利に抵触するものではない。
三 請求原因七は否認する。
四 請求原因八は争う。
第四 証拠関係
証拠の関係は、記録中の証拠に関する目録記載のとおりである。
理由
一 請求原因一ないし四は、当事者間に争いがない。
二1 被告製品一の構成が、請求原因五1のように分説できることは当事者間に争いがない。
2 被告製品一が、第一発明の構成要件cを充足するか否かについて判断する。
(一) 成立に争いのない甲第一号証の一によれば、第一公報の発明の詳細な説明の欄には、第一発明の特徴について次のとおりの記載があることが認められる。
(1) 第一発明の産業分野及び発明の骨子として、「この発明は傾斜状に保持されている選別板をゆり上げ揺動させてその高位側から玄米を、又、その低位側から籾を夫々、選別して取出すように構成すると共に、この選別板の傾斜角度を調節できるように構成している揺動式穀粒選別機において、選別板上における穀粒の分散状態を検知してこの選別機のできるだけ広い範囲にわたって選別動作が常に効率良く行われるようにその傾斜角度を自動的に調節できるようにした自動調節装置に関するものである。」(第一公報1欄三六行から2欄八行)とされている。
(2) また、従来技術のうち、選別板における選別状況を目視によって観察して、例えば、玄米が低位側の籾取出口に下り過ぎるようなときには、例えばウォームギヤ機構の手動による回動調節操作によって選別板の揺動支点を高くして選別板の傾斜角度を大きくすることによって玄米が玄米取出口に効率良く分散されるようにしたものについて、「選別状態は、作業開始の初期には絶えず変動するほか、混合米の供給量や前工程の籾摺作業における玄米と籾の混合比率などによっても変動するものであって、決して一定ではないので、常に選別状態を注視しながら、かかる手動による調節操作を常に適正に行うことは、きわめて労力の大きい作業である。」(第一公報2欄一八行から二四行)との問題点があること、従来技術のうち、分散状態の検知及び選別板の傾斜角度調節を自動的に行うものの例である、実公昭四八-一二五七号公報のものについての問題点として、「選別板の下流のみにおける穀粒層の厚さを検出してこの厚さを一定に保つように制御するのみであるので、選別板の上流帯域における穀粒層の厚さが全く不明であって、選別板の傾斜方向全域にわたっての玄米、籾などの分散、選別状態は検出できないので選別板の全域にわたって効率良く選別動作が行われない欠点がある」(第一公報2欄三四行から3欄四行)との問題点があること、同じく、揺動式選別機において、例えば特開昭四九-八四八四九号公報、又は特開昭四九-一〇七八四〇号公報の如く、すでに分散を終えて選別機の板面から流下し排出された状態における選別穀物量を例えば重量計算して、これによって選別板の板面上における分散、選別の状態を推定して検知する検知手段については、「選別板上における分散、選別状態の検知が不正確であって検知動作に遅れがあり、しかも、流下動作による計量では、計量値が振動的に変動して検知動作が不安定となる」(第一公報3欄一四行から一七行)という問題点があったことが指摘されている。
(3) これに対し、第一発明では、前記(1)の「揺動式穀粒選別機において、選別板の上記高位側と低位側における穀粒層を夫々検知できる検知器を選別板の上方に近ずけて設け、これらの検知器からの出力を受ける比較制御部を設け、上記検知器の夫々の設置位置にて所定の穀粒層が存在し得るように、上記傾斜角度調節機構を調節制御すべくこの比較制御部を構成して、穀粒の分散の状態を、選別板の傾斜高位側及び低位側の附近における穀粒層の検知動作によって自動的に常に検知して、選別板の傾斜方向全域にわたって所定の穀粒層が存在して効率の良い選別動作が行われるように傾斜角度の自動的調節が行われるよう工夫したものである」(第一公報3欄二二行から三五行)と発明の構成が説明される。そして、実施例の説明として、「例えば最上位の選別板1aの高位側板11aの附近における穀粒層8hの有無を検知できる高位の検知器9を例えば高位側板11aなどに取付けるなどして設け、又、同じ選別板1aの低位側板12aの附近における穀粒層81の有無を検知できる低位の検知器19を例えば低位側板12aに取付けるなどして設け」る(第一公報4欄一六行から二二行)旨が記載され、また、検知器について、「勿論、上記検知器9、19の取付位置は図示例のように側壁部に見られる(「限られる」の誤記と認める。)ものではなく、要するに選別板の高位側及び低位側の夫々の附近に位置せしめるようにすれば、この発明の目的に沿うものである。なお、検知器9、19の実施例として、例えば光電管を用いて高位側と低位側の穀粒層の有無を検知すれば・・・(中略)・・・又、この検知器9、19を、穀粒層の押動によって作動板を介してリミットスイッチのアクチュエーターが押動されるようにした構造のものとすれば、廉価に製作できることになる。」(第一公報4欄四二行から5欄一二行)と記載されている。更に、実施例の作用について、「選別板1a、1b・・・上における穀粒の選別作用が正常に行われて、選別板1a、1b・・・の全面にわたって効率良く選別作業が行われているときには、高位側板11aの附近には玄米が、又、低位側板12aの附近には籾が夫々存在してこれらによって所定厚さの穀粒層8h、81が共に存在することになり、夫々の検知器9、19からの出力があるので比較制御部10から指令は出ないため、傾斜角度調節機構は動作せず選別板1a、1b・・・はこの適正な傾斜角度のまま保持されることになる。」(第一公報5欄二〇行から三〇行)と記載されている。
(4) 第一発明の効果として、「穀粒の分散の状態をその選別板の上の検知器にて直接に検知できるため、この検知器の動作は選別板上の状態を反映した正確なものとなった」(第一公報6欄一四行から一六行)旨及び「この選別板の傾斜高位側及び低位側の附近の穀粒層形成の有無を検知しているので、選別板の傾斜方向全域にわたって分散の状態を検知できることになって、夫々の検知器の動作に応じて傾斜角度調節機構が作動して選別板上の傾斜方向全域にわたって好ましい厚さに穀粒層を形成しながら効率の良い選別動作が自動的に制御されて行われるのである。」(第一公報6欄一八行から二五行)と記載されている。
(二) 右(一)のとおり第一公報には、第一発明は、選別板の高位側と低位側における穀粒層を夫々検知できる検知器を選別板の上方に近づけて設けることによって、検知器の夫々の設置位置で穀粒層形成の有無を検知し、夫々の検知器の設置位置で、所定の厚さの穀粒層が存在しうるように、比較制御部を構成することによって、検知器の動作が正確なものとし、また選別板上の傾斜方向全域にわたって好ましい厚さに穀粒層を形成することができるものであることが明示されている。
ところで、「層」とは、一般に「平面的なものが重なって厚みをもった状態。また、その重なりのそれぞれ。」を意味する語であることは当裁判所に顕著であるが、第一発明にいう穀物層とは選別板上に分散している穀粒が形成するもので、好ましい所定の厚さがあるものであることは右のとおり第一公報の記載から明らかであり、他方、所定の厚さに限定があることを示す証拠はないから、穀粒一粒分の厚さの場合も複数粒分の厚さの場合も含むものと認めるのが相当である。
したがって、第一発明の「検知器の選別板の上方に近ずけ」て設ける構成は、検知器の設置位置で単なる穀粒の有無ではなく、選別板の上方に所定の厚さのある穀粒層の存在を検知するための技術的手段として採用されたものと認められる。
そうしてみると、第一発明の構成要件cにおける「検知器を選別板の上方に近ずけ」て設けるとは、選別板の表面よりも上方で表面に近い、一粒から複数粒の所定の厚さの穀粒層の存在を検出できる位置に検知器を設けることであって、所定の厚さの穀粒層の存在を検知できない、選別板の表面と同一面上に検知器を設けることは含まないものと認められる。
右認定に反する原告の主張は採用できない。
(三) 当事者間に争いがない被告製品一の目録によれば、被告製品一は、多段に重架された選別板のうち最上段の選別板47の排出側55の低位置の側壁54の近傍に、選別板47の選別面と面一に米粒を検出する選別板センサーS2と選別板47の選別面より所定量上方に突出させて米粒を検出する選別板センサーS3が取付けられ、同じく最上段の選別板47の排出側の高位置の側壁52の近傍に、選別板47の選別面と面一に米粒を検出する選別板センサーS1が取付けられているものであるところ、右選別板センサーS3は、選別板47の選別面より所定量上方に突出させて取付けられているから、検知器を選別板の上方に近づけて設けたものということができるが、選別板センサーS1は選別板47の選別面と面一に設けられているもので、検知器を選別板の上方に近づけて設けたものということができない。したがって、被告製品一は選別板の高位側に、穀粒層を検知できる検知器を選別板の上方に近づけて設けていないことになるから、第一発明の構成要件cを充足しないと認められる。
3 よって、その余の要件について判断するまでもなく被告製品一は、第一発明の技術的範囲に属するものとは認められないから、第一権利の侵害を理由とする原告の請求は理由がない。
三1 被告製品二の構成が、請求原因六1のように分説できることは当事者間に争いがない。
2 被告製品二が、第二発明の構成要件a、d、eを充足するか否かについて判断する。
(一) 成立に争いのない甲第二号証の一によれば、第二公報の発明の詳細な説明の欄には、第二発明について次のとおりの記載があることが認められる。
(1) 第二発明の構成、作用、効果について、「第2番目の発明は、脱〓ロールを駆動する電動機の負荷変動に応じて脱〓ロール間隙を自動的に調節する脱〓ロール自動調節装置において、ホッパー内に籾がなくなったとき、シャッターを閉じたときには脱〓ロール間に籾の流入が停止するため、電動機の負荷が急減し、両脱〓ロールが極端に近接し接触するため、このような場合には、サーボモーターの回転を停止することによって脱〓ロール間隙を脱〓作用をおこなっていたときと同じ値に保ち脱〓ロールの接触を防止して無駄な脱〓ロールの摩耗を防止するものである。又、ロール展開レバーを開いたときも脱〓作用はおこなわれず、脱〓ロール間隙の自動調節も不必要であるため、サーボモーターの回転を停止し作動脱〓ロールが固定脱〓ロールに近接するのを防止する必要のあることは多言を要しない。」(第二公報6欄二六行から四一行)との記載がある。
(2) 実施例における負荷変動計についての説明として、「36は負荷変動計で、変換器33で変換された直流電圧を指示針37と指示盤38で読みとると共に、調節針39を指示盤38に移動可能に設ける。該調節針39をマイクロスイッチ(略)を介して接点41に連結し、指示針37と調節針39との断続に応じて接点41の断続をおこなわす。しかして、接点41が接触したときのみ、接点41に連結するサーボモーター32が回転し、ウォーム31を回転させる。」(第二公報3欄三二行から四〇行)とされ、その作用として、「負荷変動計36の指示針37は、脱〓ロール4、5の籾摺作用による電動機6の負荷を指示する。」(第二公報4欄二二行から二四行)、「脱〓作用によって脱〓ロール4、5は徐々に径を減少し脱〓ロール間隙が拡大してゆくが、これに応じて電動機6の負荷が減少して、指示針37は下位目盛位置に移動する。しかして、指示針37が調節針39に接触すれば、マイクロスイッチの動きにより接点41がつながり、サーボモーター32が回転し、ウォーム31、ウォームホイル22、調節ハンドル26、ハンドルホルダー21を介して調節秤14が回転してアーム12が回動し作動脱〓ロール5を固定脱〓ロール4側に近接させる。このため脱〓ロール間隙は狭くなり電動機6の負荷が増大して指示針37は上位目盛位置に移動し調節針39との接触が解除されてサーボモーター32の回転は停止し、作動脱〓ロール5もその位置で停止する。」(第二公報4欄二八行から四三行)と記載されている。
また、第二発明と同じく、負荷変動計と脱〓ロール間隙調節装置とサーボモーターとを備えた籾摺機についての発明である第二公報の特許請求の範囲第1項の発明の実施例についての図面である第1図には、負荷変動計36が、指示針37、指示盤38、調節針39、接点41を含むものとして図示されている。
そして、右の脱〓ロール間隙の自動調節装置の安全装置についての発明である第二発明の実施例の説明として、「本発明は、上記脱〓ロール自動間隙調節装置に安全装置を装備したものである。45、46、47はリミットスイッチで、それぞれホッパー1、シャッター2、ロール展開ハンドル48に装着され、ホッパー1内に籾がなくなったとき、シャッター2を閉じたとき、ロール展開ハンドル48を開いたとき、サーボモーター32の回路に流れる電流を遮断するよう構成する。しかして、リミットスイッチ45、46、47は負荷変動計36に接続する。49はスイッチで、不必要なときは、サーボモーター32の回路に流れる電流を停止するために設ける。」(第二公報5欄一九行から三〇行)と記載され、第5図には、スイッチ49、ホッパー1、シャッター2、ロール展開ハンドル48に設けられたリミットスイッチ45、46、47が負荷変動計とサーボモーター32の間に順次直列に接続された状況が図示されている。
(二) 右事実によれば、第二発明は、このような構造、作用を有する負荷変動計、脱〓ロール間隙調節装置と負荷変動計が一定以下の電動機負荷を感知した時脱〓ロール間隙調節装置を脱〓ロール間隙縮小方向に駆動回転するサーボモーターとを備えた籾摺機において、ホッパー内に籾がなくなったとき、シャッターを閉じたとき、ロール展開ハンドルを開いたときの各々の作動に対応してサーボモーターの回転を停止するため、リミットスイッチをホッパー、シャッター、ロール展開ハンドルのいずれか一個所又は二個所以上に設けたことを特徴とする籾摺機の安全装置である。
そして、第二発明の負荷変動計は、特許請求の範囲第2項の記載によれば、脱〓ロール駆動電動機の負荷を感知し(検出機能)、一定以下の電動機負荷を感知し(比較機能)、(一定以下の電動機負荷を感知したとき)脱〓ロール間隙調節装置を脱〓ロール間隙縮小方向に駆動させる機能(制御機能)を有しているものであることは当事者間に争いがない。
右(一)(2)の第二発明の実施例についての記載によれば、実施例における負荷変動計は、指示盤38と指示針37により脱〓ロール駆動電動機の負荷を感知し(検出機能)、調節針39により比較を行い、一定以下の電動機負荷であるかどうか判断し(比較機能)、(一定以下の電動機負荷を感知したとき)マイクロスイッチを介して接点41をつなげて、サーボモーター32が回転することによりロール間隙が縮小されるものである(制御機能)から、右にそれぞれ具体的に例示された構成に対応する機能が、負荷変動計が備えるべき検出機能、比較機能、制御機能であると出願人において認識していたものと認められる。このことは、明細書に添付された図面の第1図において、負荷変動計36が、指示針37、指示盤38、調節針39、接点41をも含むものとして図示されていることからも裏付けられる。
右に認定したことに照らせば、第二発明の要件a、c、dの「負荷変動計」とは、脱〓ロール駆動電動機の負荷を感知し、一定以下の電動機負荷を感知し、一定以下の電動機負荷を感知したとき脱〓ロール間隙調節装置を脱〓ロール間隙縮小方向に駆動させる機能を有するものと認められる。そして、負荷変動計が備えるべき制御機能とは、原告が主張するように制御すべき信号を発するだけでは足りず、第二公報の実施例で説明されているように、接点41をつなげてサーボモーターをロール間隙縮小方向に実際に駆動させるべく電力を導通させるなどのサーボモーターに動力を与えて作動させる機能をも含むものと認められる。
(三) 別紙物件目録(二)及び弁論の全趣旨によれば、被告製品二において、CTbは電流計26に表示された電動機23の負荷電流の三〇〇〇分の一に相当する電流を信号として取り出して比較器dに入力させるから、負荷電流の検出機能を有しており、比較器dはCTbから入力された電動機23の三〇〇〇分の一に相当する電流と設定器eからの基準値とを比較するものと認められるから比較機能を有しているが、論理回路fは比較器dで比較した結果CTbから入力された電動機23の負荷電流の三〇〇〇分の一の電流の方が設定器eからの基準値より小さいときはサーボモーターに相当するロール間隙調整用モーター25をロール間隙縮小方向に回転させる制御信号を出すものの、それだけではロール間隙調整用モーターは駆動回転せず、論理回路fからの制御信号によってリレーの接点の開閉が行われ、これによってロール間隙調整用モーター25の駆動の有無や回転方向の制御が行われることが認められる。
そうすると、HU-コントロールボックスaのリレーを除いた部分は、それのみでは、第二発明の負荷変動計が備えるべき制御機能の一部であるサーボモーターに相当するロール間隙調整用モーター25を実際に駆動回転させる機能までは有していないのであるから、HU-コントロールボックスaのリレーを除いた部分が、第二発明の負荷変動計に相当するとの原告の主張は、失当であり、リレーを含むHU-コントロールボックス全体が負荷変動計に相当するものと認めることができる。
そして、右のような認定を前提として、被告製品二は第二発明の要件aを充足するものと認められる。
(四) 「リミットスイッチ」は、技術用語として、機械量の検出スイッチの一種で、物体の位置、変位、移動、通過等を検出し、電気信号として発信するものをいうことは当裁判所に顕著であり、右(一)(2)のとおり、第二発明の実施例において、負荷変動計とサーボモーター32の間にホッパー1、シャッター2、ロール展開ハンドル48に順次直列に装着され、ホッパー1内に籾がなくなったこと、シャッター2が閉じたこと、ロール展開ハンドル48が開いたことを検出し、サーボモーター32の回路に流れる電流を遮断するよう構成するものとされている。そして、第二発明の「リミットスイッチ」が、一般の技術用語以外の意味を有することを示す説明は第二発明の明細書中には認められない。
(五) 被告製品二において、調整タンク8の下部の漏斗11に設けられた籾供給シャッター10の上側近傍に設けられたレベル計34は、調整タンク8に籾米がないことを検出してサーボモーターに相当するロール間隙調整用モーター25を停止させる信号を発信しているものであるから、ホッパーに設けられホッパー内に籾のきれたことを検出し、サーボモーターの回転を停止させるリミットスイッチに相当するものと認められる。
被告製品二のレベル計34は、HU-コントロールボックスaの制御基板cの論理回路gに接続され、レベル計34で接続もしくは切断される一二V直流電流がそこで処理された後、その情報の一部が論理回路fに送られるものであるから、被告製品二においては、リミットスイッチに相当するレベル計34は、負荷変動計に相当するHU-コントロールボックス中の論理回路g、論理回路fと一二V電源に接続しているが、サーボモーターに相当するロール間隙調整用モーター25には接続しておらず、リミットスイッチが負荷変動計とサーボモーターの間に設けられるという第二発明の要件dを充足しないものというほかない。
原告は、被告製品二において、第二発明の「リミットスイッチ」に相当するのは「レベル計34、論理回路g、論理回路fの一部の処理機能部分、リレー」であると主張するが、仮にその見解によるとしても、第二発明の「負荷変動計」に相当するHUコントロールボックスa全体と、第二発明の「リミットスイッチ」に相当すると原告が主張するレベル計34、論理回路g、論理回路fの一部の処理機能部分B、リレーとは、少なくとも論理回路fの一部の処理機能部分とリレーにおいて構成を共用しているものであり、第二発明の要件d、即ち「負荷変動計とサーボモーターとの間に」、サーボモーターの回転を停止するためのリミットスイッチを設けるという構成を欠くことが明らかである。
以上のとおり、被告製品二は、第二発明の要件dを充足しないものと認められる。
3 よって、その余の点について判断するまでもなく被告製品二は、第二発明の技術的範囲に属するものとは認められないから、第二権利に基づく原告の請求は理由がない。
四 以上の次第で、原告の本訴請求は、いずれも理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担について、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 西田美昭 裁判官 大須賀滋 裁判官櫻林正己は転補のため署名押印できない。 裁判長裁判官 西田美昭)
権利目録(一)
一、出願年月日 昭和五一年三月五日
二、出願番号 特願昭五一-二三一七七号
三、出願公告年月日 昭和五七年一〇月二一日
四、出願公告番号 特公昭五七-四九二七三号
五、発明の名称 揺動式穀粒選別機における選別板の傾斜角度自動調節装置
六、特許年月日 昭和五九年三月一二日
七、特許番号 第一、一九五、五八五号
権利目録(二)
一、出願年月日 昭和四七年三月一三日
二、出願番号 特願昭四七-二五四二〇号
三、出願公告年月日 昭和五一年一月一九日
四、出願公告番号 特公昭五一-一六二〇号
五、発明の名称 籾摺機における脱〓ロール自動調節装置
六、特許年月日 昭和五一年九月二二日
七、特許番号 第八三〇、〇七一号
〈19〉日本国特許庁(JP) 〈11〉特許出願公告
〈12〉特許公報(B2) 昭57-49273
〈51〉Int. Cl.3B 07 B 1/32 識別記号 庁内整理番号6439-4D 〈24〉〈44〉公告 昭和57年(1982)10月21日
発明の数 1
〈54〉揺動式穀粒選別機における選別板の傾斜角度自動調節装置
審判 昭53-5309
〈21〉特願 昭51-23177
〈22〉出願 昭51(1976)3月5日
〈65〉公開 昭52-107952
〈43〉昭52(1977)9月10日
〈72〉発明者 笹倉竹男
松山市土居田町588番地1井関農機株式会社技術部内
〈72〉発明者 日野守雄
松山市土居田町588番地1井関農機株式会社技術部内
〈71〉出願人 井関農機株式会社
松山市馬木町700番地
〈74〉代理人 弁理士 林孝吉
〈56〉引用文献
実公 昭45-28283(JP,Y1)
実公 昭48-1257(JP,Y1)
〈57〉特許請求の範囲
1 傾斜状の選別板を揺動させてその高位側から玄米を、又その低位側から籾を選別して取出すように構成すると共に、この選別板の傾斜角度調節機構を備えている揺動式穀粒選別機において、選別板の上記高位側と低位側における穀粒層を夫々検知できる検知器を選別板の上方に近ずけ、これらの検知器からの出力を受ける比較制御部を設けて、上記検知器の夫々の設置位置にて所定の穀粒層が存在し得るように、上記傾斜角度調節機構を調節制御すべくこの比較制御部が構成してあるこをと特徴とする揺動式穀粒選別機における選別板の傾斜角度自動調節装置。
発明の詳細な説明
この発明は傾斜状に保持されている選別板をゆり上げ揺動させてその高位側から玄米を、又、その低位側から籾を夫々、選別して取出すように構成すると共に、この選別板の傾斜角度を調節できるように構成している揺動式穀粒選別機において、選別板上における穀粒の分散状態を検知してこの選別機のできるだけ広い範囲にわたつて選別動作が常に効率良く行われるようにその傾斜角度を自動的に調節できるようにした自動調節装置に開するものである。
かかる揺動式穀粒選別機において、選別状態の判別とこれによる傾斜角度の調節操作の従未例は、図示を省略したが、選別板における選別状態を目視によつて観察して、例えば玄米が低位側の籾取出口に下り過ぎるようなときには、例えばウオームギヤ機構の手動による回動調節操作によつて選別板の揺動支点を高くして選別板の傾斜角度を大きくすることによつて玄米が玄米取出口側に効率良く分散ざれるようにしたものが一般的である。しかし、選別状態は、作業開始の初期には絶えず変動するほか、混合米の供給量や前工程の籾摺作業における玄米と籾の混合比率などによつても変動するものであつて、決して一定ではないので、常に選別状態を注視しながら、かかる手動による調節操作を常に適正に行うことは、きわめて労力の夫きい作業である。
そこでかかる分散状態の検知及び選別板の傾斜角度調節を自動的に行うものとして、実公昭48-1257号公報のように万石網である選別板の下流帯域における穀粒の流動層の厚さを、この附近の穀粒に接触して回動する触板の回動動作によつて検出して、この流動層が例えば厚くなり過ぎたときは、ソレノイドを励磁せしめて選別板の勾配角度を大きくするように構成したものが知られている。
しかしこの構造のものでは、選別板の下流のみにおける穀粒層の厚さを検出してこの厚さを一定に保つように制御するのみであるので、選別板の上流帯域における穀粒層の厚さが全く不明であつて、選別板の傾斜方向全域にわたつての玄米、籾などの分散、選別状態は検出できないので選別板の全域にわたつて効率良く選別動作が行われない欠点があるため、揺動のない万石網の勾配角度自動調節装置としては有効であつても、この発明の目的とする揺動式選別機における選別板の傾斜角度自動調節装置としては未だ不充分である。
又、揺動式選別機において例えば特開昭49-84849号公報、又は特開昭49-107840号公報の如く、すでに分散を終えて選別板の板面から流下し排出された状態における選別穀物量を例えば重量計量して、これによつて選別板の板面上における分散、選別の状態を推定して検知する検知出段であつては、選別板上における分散、選別状態の検知が不正確であつて検知動作に遅れがあり、しかも、流下動作による計量では、計量値が振動的に変動して検知動作が不安定となる不利がある。
そこでこの発明においては、傾斜状の選別板を揺動させてその高位側から玄米を、又その低位側から籾を選別して取出すように構成すると共に、この選別板の傾斜角度調節機構を備えている揺動式穀粒選別機において、選別板の上記高位側と低位側における穀粒層を夫々検知できる検知器を選別板の上方に近ずけて設け、これらの検知器からの出力を受ける比較制御部を設け、上記検知器の夫々の設置位置にて所定の穀粒層が存在し得るように、上記傾斜角度調節機構を調節制御すべくこの比較制御部を構成して、穀粒の分散の伏態を、選別板の傾斜高位側及び低位側の附近における穀粒層の検知動作によつて自動的に常に検知して、選別板の傾斜方向全域にわたつて所定の穀粒層が存在して効率の良い選別動作が行われるように傾斜角度の自動的調節が行われるよう工夫したものである。
そして1実施例を説明すれば、第1図のように上下に積層した選別板1a、1b……を揺動台枠2に取付け、低位の揺動アーム7、7を揺動支点軸5によつて選別機機枠20に枢支し、又、ウオーム機構4によつて起伏自在とした屈折リンク21、21の上部の揺動支点軸22、22には後位の揺動アーム23、23を枢支し、揺動台枠2は、低位のプラケツド24、24にて低位の揺動アーム7、7に、又、高位のブラケツト25、25にて高位の揺動アーム23、23に夫々枢支し、電動機6にて伝動機構26を介して回転論27を回転させることによつて公知の揺動機構を介して低位の揺動アーム7、7を揺動支点軸5を中心に揺動させ、揺動台枠2と共に選別板1a、1b……を同図の左右方向に揺動させて、選別板1a、1b……上に供給される穀粒を分散、選別し、選別板1a、1b……の高位側から玄米を、又、低位側から籾を選別して取出すように構成すると共に、電動機の如き傾斜駆動部13の回転に伴つて調節軸3を介してウオーム機構4を駆動することによつて屈折リンク21、21の起立角度を変えて揺動支点軸22、22を上昇又は下降させて選別板1a、1b……の傾斜角度を調節するようにした傾斜角度調節機構を備えている揺動式穀粒選別機において、例えば最上位の選別板1aの高位側板11aの附近における穀粒層8hの有無を検知できる高位の検知器9を例えば高位側板11aなどに取付けるなどして設け、又、同じ選別板1aの低位側板12aの附近における穀粒層8lの有無を検知できる低位の検知器19を例えば低位側板12aに取付けるなどして設け、第2図にブロツク図として示したように高位の検知器9からの出力信号と低位の検知器19からの出力信号とを比較制御部10に入力するよう接続し、そして選別板1a、1b……上における選別作用が正常に行われて高位側板11a及び低位側板12aの夫々の附近に穀粒層8h、8lが共に存在するときには夫々の検知器9、19から出力を受けた比較制御部10からは指令は出ないので、傾斜躯動部13は動作しないことになり、そして高位側板11aの附近に存在すべき玄米層が低位側に片寄りしてこの高位側板11aの附近に穀粒層8hが存在せずに、低位側板12aの附近に穀粒屠8lが存をするときには、低位の検知器19からの出力信号のみを比較制御部10が受けることになり、この結果、比較割御部10から傾斜角度減少の指令が傾斜駆動部13に支えられるように構成してあるので、この傾斜躯動部13は調節軸3を介してウオーム機構4を躯動して選別板1a、1b……の傾斜角度を一定量だけ減少せしめることになるように構成している。勿論、上記検知器9、19の取付位置は図示例のように側壁部に見られるものではなく、要するに選別板の高位側及び低位側の夫々の附近に位置せしめるようにすれば、この発明の目的に沿うものである。
なお、検知器9、19の実施例として、例えば光電管を用いて高位側と低位側の穀粒層の有無を検知すれば、光の及ぶ範囲の比較的広い範囲にわたつて平均的にこれを検知できることになり、又、穀粒の流れによるスイツチ部のガタツキなどがなくて安定した検知動作を得ることができる。又、この検知器9、19を、穀粒層の押動によつて作動板を介してリミツトスイツチのアクチユエーターが押動されるようにした構造のものとすれば、廉価に製作できることになる。
さらに、選別板1a、1b……を多段に積層している選別機の場合に、その最上段の選別板1aの穀粒層を上述のように検知器9、19にて検知する実施例とすれば、これらの検知器9、19の設置作業と、設置位置の変更調整(穀粒分布の状態を最も良く代表できる位置に)が容易となる利点がある。
したがつて選別板1a、1b……上における穀粒の選別作用が正常に行われて、選別板1a、1b……の全面にわたつて効率良く選別作業が行われているときには、高位側板11aの附近には玄米が、又、低位側板12aの附近には籾が夫々存在してこれらによつて所定厚さの穀粒層8h、8lが共に存在することになり、夫々の検知器9、19からの出力があるので比較制御部10から指令は出ないため、傾斜角度調節機構は動作せず選別板1a、1b……はこの適正な傾斜角度のまま保持されることになる。
これに対して例えば選別板1a、1b……の傾斜角度が大きくなり過ぎるなどの原因によつてゆり上げ選別の機能が悪くなり高位側板11aの附近に存在すべき玄米層が低位側に片寄りしてこの附近の検知器9の出力はなく、低位側板12aの附近の検知器19からのみ出力信号があるときには、比較制御部10からは傾斜角度減少の指令が傾斜駆動部13に与えられるので、傾斜角度調節機構が動作して選別板1a、1b……の傾斜角度を一走量だけ減少せしめることになり、これによつてゆり上げ選別の機能が回復して高位側の検知器9の附近に玄米があらわれるようになれば、傾斜角度調節機構が停止して良好な選別状態が持続されるものである。
この発明に係る揺動式穀粒選別機における選別板の傾斜角度自動調節装置は上述のように選別板の高位側と低位側における穀粒層を、夫々検知できる検知器を選別板の上方に近ずけて設け、これらの検知器からの出力を受ける比較制御部を設けて上記検知器の夫々の設置位置にて所定の穀粒層が存在し得るように、傾斜角度調節機構を調節制御すべく、この比較制御部を構成しているので、穀粒の分散の状態をその選別板の上の検知器にて直接に検知できるため、この検知器の動作は選別板上の状態を反映した正確なものとなつたのである。
そして、この選別板の傾斜高位側及び低位側の附近の穀粒層形成の有無を検知しているので、選別板の傾斜方向全域にわたつて分散の状態を検知できることになつて、夫々の検知器の動作に応じて傾斜角度調節機構が作動して選別板上の傾斜方向全域にわたつて好ましい厚さに穀粒層を形成しながら効率の良い選別動作が自動的に制御されて行われるのである。
図面の簡単な説明
図はこの発明の1実施例を示すもので、第1図は揺動式穀粒選別機の要部縦断正面図、第2図はこの発明の制御回路を示すブロツク図である。
符号説明、1a、1b……選別板、2……揺動台枠、3……調節軸、4……ウオーム機構、5、-22……揺動支点軸、6……電動機、7、23……揺動アーム、8h、8l……穀粒層、9、19……検知器、10……比較制御部、11a……高位側板、12a……低位側板、13……傾斜躯動部、14……電源、20……選別機構枠、21……屈折リンク、24、25……ブラケツト、26……伝動機構、27……回転論。
第1図
〈省略〉
第2図
〈省略〉
〈51〉Int. Cl2. B 02 B 3/04 〈52〉日本分類3 C 221 〈19〉日本国特許庁 〈11〉特許出願公告
昭51-1620
特許公報
〈44〉公告 昭和51年(1976)1月19日
庁内整理番号 6448-21 発明の数 3
〈54〉籾摺機における脱〓ロール自動調節装置
〈21〉特願 昭47-25420
〈22〉出願 昭47(1972)3月13日
公開 昭48-90836
〈43〉昭48(1973)11月27日
〈72〉発明者 松本始
松山市桑原町536の2
〈71〉出願人 井関農機株式会社
松山市馬木町700
〈57〉特許請求の範囲
1 脱〓ロール駆動電動機の負荷を感知する負荷変動計と、脱〓ロール間隙調節装置と、負荷変動計が一定以下の電動機負荷を感知したとき脱〓ロール間隙調節装置を脱〓ロ-ル間隙縮少方向に駆動回軽するサーボモーターとを備えた籾摺機の脱〓ロール間隙調節装置とサーボモーターとの間に、自動手動操作切換自在にしてなる脱〓ロール間隙調節ハンドルを設けた籾摺機の脱〓ロール間隙調節装置。
2 脱〓ロール駆動電動機の負荷を感知する負荷変動計と、脱〓ロール間隙調節装置と、負荷変動計が一定以下の電動機負荷を感知したとき脱〓ロール間隙調節装置を脱〓ロール間隙縮少方向に駆動回転するサーボモーターとを備えた籾摺機の負荷変動計とサーボモーターとの間に、ホツパー内に籾のきれたとき、シヤツターを閉じたとき、ロール展開ハンドルを開いたときの各々の作動に対応して上記サーボモーターの回転が停止されるぺくリミツトスイツチを、ホツパー、シヤツター、ロール展開ハンドルのいずれか1個所又は2個所以上に設けたことを特徴とする籾摺機の安全装置。
3 脱〓ロール駆動電動機の負荷を感知する負荷変動計と、脱〓ロール間隙調節装置と、負荷変動計が一定以下の電動機負荷を感知したとき脱〓ロール間隙調節装置を脱〓ロール間隙縮少方向に駆動回転するサーボモーターとを備え負荷変動計が過大負荷を感知したとき、脱〓ロール間への籾供給又は脱〓ロール駆動電動機を停止させる籾摺機の安全装置。
発明の詳細な説明
本発明は、籾摺機の脱〓ロール間隙を常時適正に保持する自動調節装置ならびにこれに関連する諸装置に関するものである。
籾摺作業においては籾摺機の脱〓作用を効率よくおこなうと共に、省力化を実現するために脱〓ロール間隙を自動的に調節することが望ましいが本発明においては、脱〓ロールを駆動する電動機の負荷の変動を感知し、該負荷変動に応じて脱〓ロール間隙を適正値に修正し、常時効率のよい脱〓作業を行うとと共に、この脱〓ロール自動調節装置を使用するにあたつての各種の安全装置、ならびにこの脱〓ロール自動調節装置を備えた籾摺機の運転開始時において脱〓ロール間隙を適正値に設定するために必要な装置を提供せんとするものである。
本発明を図面の実施例にもとづいて説明する。
1はホツパー、2はシヤツター、3は籾送ワロール、4は固定脱〓ロール、5は作動脱〓ロールである。6は電動機で、電源7により回転し、チエーン8を介して固定脱〓ロール4を回転させる固定脱〓ロール4の回軽は、それぞれ歯車9ならびに10、11を介して籾送りロール3、作動脱〓ロール5に伝えられ、これらを回転させる。
12はアームで、その下端部を歯車11の中心位置13を支点として揺動自在に枢着し、先端部には枢着せるネジ部15を設ける。
14は調節杆で、一端にネジを設けてアーム12のネジ部15にかみあわせ、他端には自動手動切換自在の調節装置16を設ける。
この調節装置16の構造を第2図、第3図にて詳細に説明する。調節杆14の後端部に突起17を有するメタル18を固着し、該メタル18と機枠19との間に発条20を介在せしめる。21はハンドルホルダーで、ウオームホイル22を遊嵌させ、機枠19に対して回転自在支承し、かつ調節杆14に対してボルト23にて位置ぎめする。このハンドルホルグー21の内部に係止体24を設け、前記メタル18の突起17に係合さす。ウオームホイル22には切欠部25を設け調節ハンドル26の先端部27を係脱自在となす。28は突出体で、ハンドルホルダー21に設けている。
調節ハンドル26は、ハンドルホルダー21に遊嵌せしめ、該調節ハンドル26を引いたときハンドルホルダー21の突出体28に係合する突起29を設ける。
30は発条で、調節ハンドル26をウオームホイル22側に押圧する。31はウオームで、ウオームホイル22と噛合する。32はサーボモーターで、ウオーム31を回転させる。
かくして、通常はウオーム31、ウオームホイル22、調節ハンドル26、ハンドルホルダー21を介してサーボモーター32の回転は調節杆14に伝えられアーム12を作動して作動脱〓ロール5を移動させて脱〓ロール間隙を調節することになるが、調節ハンドル26を手前に引き出した場合は、ウオームホイル22と調節ハンドル26の先端部27との係合がはずれ、調節ハンドル26を手動にて回転させることによりハンドルホルダー21を介して調節杆14が回軽し、脱〓ロール間際の調節をなし得る。
33は変換器で、交流の電圧電流をこれに比例した直流電圧に変更するものである。この変換器33は、変圧器34、変流器35を介して電源7に接続する。36は負荷変動計で、変換器33で変換された直流電圧を指示針37と指示盤38で読みとると共に、調節針39を指示磐38に移動可能に設ける。該調節針39をマイクロスイツチ(図示せず)を介して接点41に連結し、指示針37と調節針39との断続に応じて接点41の断続をおこなわす。しかして、接点41が接触したときのみ、接点41に連結するサーボモーター32が回転し、ウオーム31を回転させる。42はサーボモーター32の接断スイツチ、43は調節装置16の自動手動の切換スイツチで、共にサーボモーター32と接点41との間に設けてある。
次に、上例の作用を説明する。
先ず、切換スイツチ42を切り、電動機6を始動する。次に、調節ハンドル26を手動に切換え脱〓ロール間隙の調節をおこなう。
その方法は調節ハンドル26を引くことによりその先端部27をウオームホイル22の切欠部25より引き出し、調節ハンドル26とウオームホイル22との係合をはづす。このとき、調節ハンドル26の突起29はハンドルホルダー21の突出体28と係合し、調節ハンドル26を手動にて回転させることにより、ハンドルホルダー21を介して調節杆14を回転させ作動脱〓ロール5を移動させることになる。調節ハンドル26の回転は、ウオームホイル22との係合がはづれているため、軽くなしうることは無論である。
なお、このときの脱〓ロール間隙調節方法を簡単に述ぺると、調節ハンドル26を適宜回転させて脱〓ロール4、5を接触させ、これを脱〓ロール4、5の接触音で確認し、調節ハンドル26を適宜の回転角だけ逆廻しすることによりおこなう。
ここで、シヤツター2を開けば、籾送りロール3の作用によりホツパー1内の籾は脱〓ロール4、5間に供給される。このとき負荷変動計36の指示針37は、脱〓ロール4、5の籾摺作用による電動機6の負荷を指示する。ここで調節針39を指示針37に接する手前、指示盤38の若干下位目盛位置に設定し、切換スイツチ42を入れる。
以上の操作によつて、脱〓ロール間隙は常時適正に自動調節されることになる。すなわち、脱〓作用によつて脱〓ロール4、5は徐々に径を減少し脱〓ロール間隙が拡大してゆくが、これに応じて電動機6の負荷が減少して、指示針37は下位目盛位置に移動する。しかして、指示針37が調節針39に接触すれば、マイクロスイツチの動きにより接点41がつながり、サーボモーター32が回転し、ウオーム31、ウオームホイル22、調節ハンドル26、ハンドルホルダー21を介して調節杆14が回軽してアーム12が回動し作動脱〓ロール5を固定脱〓ロール4側に近接させる。このため脱〓ロール間隙は狭くなり電動機6の負荷が増大して指示針37は上位目盛位置に移動し調節針39との接触が解除されてサーボモーター32の回転は停止し、作動脱〓ロール5もその位置で停止する。
このように、脱〓ロール4、5の径が減少するのに応じて、上記の作動を反覆しつつ常時脱〓ロール間隙を一定に保つて脱〓作用がなされる。
なお、第4図のように、調節針39、40を指示針37の上位目盛位置、下位自盛位置両方に設けて脱〓ロール間隙を調節するもよい。この場合、指示針37と調節針39とが接触すれば前述の説明の如くサーボモーター32は停止することになるが、指示針37と調節針40とが接触すれば脱〓ロール間隙が狭小になりすぎ電動機(図示せず)の負荷が増大した場合であるから、サーボモーター32を逆転させ、作動脱〓ロール5を固定脱〓ロール4から遠ざける。44が切換装置で、指示針37が調節針39又は40に接触することによりサーボモーター32の正転逆転の切換をさせる装置ならびにサーボモーター32の接断スイツチを装備したものである。
第2番目の発明を第5図の実施例について説明する。
本発明は、上記脱〓ロール自動間隙調節装置に安全装置を装備したものである。45、46、47はリミツトスイツチで、それぞれホツバー1、シヤツター2、ロール展開ハンドル48に装着され、ホツバー1内に籾がなくなつたとき、シヤツター2を閉じたとき、ロール展開ハンドル48を開いたとき、サーボモーター32の回路に流れる電流を遮断するよう構成する。しかして、リミツトスイツチ45、46、47は負荷変動計36に接続する。49はスイツチで、不必要なときは、サーボモーター32の回路に流れる電流を停止するために設ける。
第3番目の発明を第6図の実施例について説明する。
本発明も、上記脱〓ロール自動調節装置に安全装置を装備したもので、50はソレノイド、51はその鉄心、52はシヤツター2の突出子、53は発条である。ソレノイド50の鉄心51とシヤツター2の突出子52とを係合離脱自在に構成し、シヤツター2と機枠19との間には発条53を介在させる。通常は負荷変動計36の指示針37と調節針39との接触離脱作用によつてサーボモーター32を回転停止させ脱〓ロール間隙を一定に保ちつつ脱〓作用を続けるが、負荷変動計36が異常な過大負荷を感知したときは指示針37が時計方向に回転し、調節針40に接触してソレノイド50に電流が流れ鉄心51を上方にひきつけて鉄心51とシヤツター2の突出子52との係合をはづし、シヤツター2を発条53の作用によつて閉じ脱〓ロール4、5間への籾供給を停止する。なお、本発明においても、第1番目の発明の実施例を示す第4図の場合と同様、指示針37と調節針40との接触によりサーボモーター32を逆転せしめる構成を併用するもよい事はむろんである。
又、負荷変動計36が異常な過大負荷を感知したとき、シヤツター2を閉じるかわりに電動機6を停止させて脱〓ロール4、5の回転をとめてもよい。
第1番目の発明は、脱〓ロールを駆動する電動機の負荷変動に応じて脱〓ロール間隙を自動的に調節する脱〓ロール自動調節と手動調節を簡単な操作にて切替可能に構成したため、脱〓作業前、容易に脱〓ロール間隙を手動にて適正値に設定できるとともに、機械の始動調整作業時等においても手動調節に切換えることにより脱〓ロール間隙を不側に変化させることがない。又、籾摺作業中、一時的に籾供給を停止させた場合においても脱〓ロール自動調節装置を即座に手動調節に切換えることによりロール間隙を変化させず、引き続いて籾摺作業を行なう場合には再び自動調節に切換えて連続して効率の良い作業が行なえるものである。
第2番目の発明は、脱〓ロールを駆動する電動機の負荷変動に応じて脱〓ロール間隙を自動的に調節する脱〓ロール自動調節装置において、ホツバー内に籾がなくなつたとき、シヤツターを閉じたときには脱〓ロール間に籾の流入が停止するため、電動機の負荷が急減し、両脱〓ロールが極端に近接し接触するため、このような場合には、サーボモーターの回転を停止することによつて脱〓ロール間隙を脱〓作用をおこなつていたときと同じ値に保ち脱〓ロールの接触を防止して無駄な脱〓ロールの摩耗を防止するものである。又、ロール展開レバーを開いたときも脱〓作用はおこなわれず、脱〓ロール間際の自動調節も不必要であるため、サーボモーターの回転を停止し作動脱〓ロールが固定脱〓ロールに近接するのを防止する必要のあることは多言を要しない脱〓ロールを駆動する電動機の負荷変動に応じて脱〓ロール間隙を自動的に調節する脱〓ロール自動調節装置において、脱〓ロールを駆動する電動機の異常過負荷により直ち脱〓ロール間への籾供給を停止するか、又は、電動機の回転を停止して脱〓ロールの回転をとめるため、砕米等の発生による米質の低下を可及的速かに防止し得ると共に、脱〓ロールの温度上昇を防止し耐久力を増大させ得るものである。図面の簡単な説明
図は本発明の実施例を示すもので、第1図は一部断面せる側面図、第2図は調節ハンドル附近の断面図、第3図はそのA-A断面図、第4図は本発明の他の実施例図、第5図は第3番目の発明の一部断面せる側面図、第6図は第4番目の発明の一部断面せる側面図である。
1はホツバー、2はシヤツター、4は固定脱〓ロール、5は作動脱〓ロール、6は電動機、26は調節ハンドル、32はサーボモーター、36は負荷変動計、45、46、47はリミツトスイツチ、48はロール展開ハンドルを示す。
〈56〉引用文献
特 公昭47-31144
第1図
〈省略〉
第2図
〈省略〉
第3図
〈省略〉
第4図
〈省略〉
第5図
〈省略〉
第6図
〈省略〉
物件目録(一)
一、図面の説明
第一図は一部を切り欠いた籾玄米選別装置の説明用正面図
第二図は籾玄米選別装置の斜視図
第三図は籾玄米選別装置の選別板の平面図
第四図は籾玄米選別装置の角度調節機構を示す斜視図
第五図は籾玄米選別装置の制御盤
第六図は籾玄米選別装置の作動を示すフローチャート
二、構造の説明
(一) 籾玄米選別装置5の構造
籾玄米選別装置5は、選別部91、駆動部92、供給部93を備えている。
選別部91は、揺動体46上に六枚の選別板47を多段に重架し、支持アーム48、49で支持すると共に、選別板47の高位置の供給側56に均分器57を連結している。選別板47は、四角形状で前後及び左右の二方向に傾斜し、側壁52、53、54を立設し、一側を開口して排出側55とする。排出側55は全幅に亘って開口され、その外側に排出口94を形成して排出樋58が設けてあり、排出口94は高位置を玄米取出口59、低位置を籾取出口61、中間位置を混合米取出口60としている(第三図)。それぞれの取出口の境界には高位置側に玄米用仕切板62を、低位置側に籾用仕切板63をそれぞれ位置調節自在に設けてある。玄米用仕切板62にはセンサー77が装着されており、その信号によってこの玄米用仕切板62が仕切板調整モーター76で移動される。また、最上段の選別板47の排出側55には、側壁54の近傍に二個の選別板センサーS2、S3を取付け、側壁52の近傍に一個の選別板センサーS1を取付け、選別板センサーS1、S2は選別板47の選別面と面一に、選別板センサーS3は選別板47の選別面より所定量上方に突出させ、これらS1、S2、S3、を制御盤65に連結する。
駆動部92は、揺動体46とクランク軸50とをロッド51で連結して揺動体46を往復円弧運動させるようになっている。また、駆動部92には、選別板47を固定して揺動体46の傾斜角度を調節する角度調節用モーター66を設ける。角度調節用モーター66にはギヤケース67を介してネジ軸68が連結してあり、ネジ軸68の端部には軸70にその一端を固定したアーム69の他端を連絡し、軸70と軸71とをアーム95によって連絡する。軸70の一端には指針72が設けてあり、角度表示用センサー73で指針72の回動位置を検出するようになっている。
供給部93は、選別部91の上方にタンク37を設け、タンク37の下部に二本のエヤーシリンダー38、39でそれぞれ開閉される二個のシャッター40、41を備えた漏斗42を設け、漏斗42にモーター43で開度が調節される籾玄米の供給量調節バルブ44を設けている。また、タンク37には上限レベル計74及び下限レベル計75が設けられている。
(二) 制御関係の配線
籾玄米選別装置5側では、上限レベル計74、下限レベル計75、選別板センサーS1、S2、S3、角度表示用センサー73、及び玄米仕切板62のセンサー77の信号線をそれぞれ中継器を介して選別機の制御盤65に連結し、制御盤65からは制御用の出力線をエヤーシリンダー38、39、モーター43、角度調節用モーター66及び仕切板調整モーター76にそれぞれ連結している。
三、作用の説明
(一) 籾玄米選別装置5の作用
電動機(図示せず)を駆動すると、クランク軸50が回転し、揺動体46がロッド51を介してクランク軸50の偏心量に関連した振幅で斜上下に揺動運動する。籾玄米選別装置5の制御盤65の電源スイッチ96を入れ、自動手動切換スイッチ78を自動に設定すると、第六図フローチャートに示す自動運転が開始される。
まず、タンク37に設けてある下限レベル計75にょり籾が検出されるとエヤーシリンダー38が働き、シャッター40が開いて、六枚の選別板47上に籾玄米が供給される。選別板47上に供給された玄米と籾との混合米は、斜上下の揺動作用を受けて選別板47上に拡散するが、玄米と籾は物理的性状の差異により、玄米は下層側に沈み、粗雑面をなす選別板47の揺り上げ作用により高位置側へ集積し、また籾は上層側に浮くため選別板47の粗雑面による揺り上げ作用を直接受けずに低位置側へ集積してそれぞれ選別板47の排出側55へ移動し、玄米は玄米取出口59に、籾は籾取出口61に、また、混合米は混合米取出口60にそれぞれ排出される。この場合、選別板47の傾斜角度は選別板47上に混合米を均等に分散する程度がよい。
そのため、シャッター40が開いてから一定時間(約二〇秒)すると第一のタイマーが働き傾斜角度調整を開始する。
即ち、選別板センサーS1が米粒を検出しないときは、選別板47の傾斜角度が小さくなる方向に角度調節用モーター66が回転し、逆に選別板センサーS2が米粒を検出しないときは、選別板47の傾斜角度が大きくなる方向に角度調節用モーター66が回転し、更に選別板センサーS1、S2がともに米粒を検出し、かつ選別板センサーS3が米粒を検出するときは、選別板47の傾斜角度が小さくなる方向に角度調節用モーター66が回転し、選別板47は選別板センサーS3だけが米粒を検出しない適正な角度に調節される。
玄米用仕切板62のセンサー77により玄米用仕切板62を仕切板調整モーター76で適正位置に移動して玄米取出口59に籾が混入しないようにし、さらにシャッター40が開いてから一定時間(約七〇秒)経過したことを第二のタイマーが計測した後、循環排出切換バルブ84が自動的に排出側に切換えられ、選別された玄米、籾米、混合米はそれぞれ後工程に送られる。
自動手動切換スイッチ78を手動に設定すればシャッター開閉スイッチ79、選別板角度調整スイッチ80、仕切板調整スイッチ81及びバルブ切換スイッチ82は手動でそれぞれ独立して調整される。供給量調節バルブ44の開度は供給量調節スイッチ83を操作してモーター43で調整される。
第1図
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第2図
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第3図
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第4図
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第5図
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第6図
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物件目録(二)
一.図面の説明
第一図は籾摺機の正面図
第二図は籾摺機の背面図
第三図は籾摺機の制御盤
第四図は籾摺機の作動を示すフローチャート
第五図はロール間隙調整用モーターの電気制御構成図
二.構造の説明
a 籾摺装置4の構造
籾摺装置4は、籾摺機2と風選機3とを備える。
籾摺機2は、機枠13の内部に主軸14と副軸15とを回転自在に軸支し、それぞれの軸に脱〓ロール16、17を軸装する。そして、籾摺機2の上部には漏斗11を介して調整タンク8を連結する。漏斗11には、エヤーシリンダー9で開閉される籾供給シャッター10と、籾供給量調節バルブ12とを設ける。
風選機3は、籾摺機2の下部に位置し、その機枠18の内部には送風機19を設けると共に、籾玄米移送螺旋20、未熟粒移送螺旋21、及び籾殻移送螺旋22をそれぞれ設ける。籾摺機2の上部には、脱〓ロール16、17、送風機19及び前記螺旋20、21、22を駆動する電動機23を取付ける。また、籾摺機2の一側には籾摺機2の制御盤24を設け、籾摺機2の後方にはロール間隙調整用モーター25を設ける。
籾摺機2の制御盤24のパネル上には、電流計26、自動手動切換スイッチ27、シャッター開閉スイッチ28、及び、ロール間隙調整スイッチ29とそれぞれの表示ランプとが設けてある(第三図)。また、ロール間隙調整用モーター25は、その軸端に鎖車30が装着され、チエーン31を介してロール調整軸32の鎖車33を正逆回転可能としている。籾供給シャッター10の近傍上側にはレベル計34を設ける。ロール調整軸32に設けた磁石36はこれに対応して設けた感知素子35を伴ってロール全開ストッパー用近接スイッチを構成している。
b 制御関係の配線
第一図に示す様に、籾摺装置4では、レベル計34、及び磁石36・感知素子35の信号線をそれぞれ中継器を介して籾摺機2の制御盤24に連結し、制御盤24からは制御用の出力線をエヤーシリンダー9、及びロール間隙調整用モーター25にそれぞれ連結している。
ロール間隙調整用モーター25の電気制御の構成は、第五図のように、電流計26の右側にHU-コントロールボックス〈a〉用のCT〈b〉があり、さらにその右側に制御基板〈c〉(P7652)が設けられているが、このCT〈b〉より右側で、電動機23に流れる電流の三〇〇〇分の一に相当する電流を信号として取出し制御基板〈d〉の電気回路に供給している。そして、この電気回路は、比較器〈d〉や設定器〈e〉等の各種電気部品及び論理回路〈f〉及び論理回路〈g〉によって構成され、別途導入される一二ボルト直流電源によって駆動されて、取出した電流の変化に基づいて論理回路〈f〉に接続されたリレーの接点の開閉を行なう。一方、ロール間隙調整用モーター25はリレーを介して導入されている二〇〇ボルト交流電源によって駆動されるが、リレーの接点が右のように開閉されることによりその駆動の有無や回転方向の選択の制御が行なわれるようになっている。前記レベル計34は、HU-コントロールボックス〈a〉の制御基板〈c〉の論理回路〈g〉に接続され、レベル計34で接続もしくは切断される一二ボルト直流電流がそこで処理された後、その情報の一部が論理回路〈f〉に送られる。
三.作用の説明
籾摺機2の制御盤24の自動手動切換スイッチ27を自動側に倒せば、電動機23が駆動され籾摺機2の主軸14、副軸15及び風選機3の送風機19、各移送螺旋20、21、22が回転し、第四図フローチャートに示す自動運転が開始される。調整タンク8に籾があることをレベル計34で検出することにより、運転条件が満足されると(ステップ3)、籾供給シャッター10が開き(ステップ4)、タイマーにより一.五秒してロール間隙調整用モーター25が回転し電動機23の電流値が論理回路で設定した値になるようにロール間隙を制御する(ステップ5)。前記レベル計34で籾があることを検出しているときは、そのまま連続して運転されるが(ステップ6)、調整タンク8に籾がないことをレベル計34で検出して、前記の運転条件が変わると、籾供給シャッター10が閉じロール間隙調整用モーター25が設定時間(約三秒)だけロール開方向に回転して停止する(ステップ7、8、9)。籾摺装置4の調整タンク8に籾が充分に供給されて、再び、前記運転条件が満足されると、籾供給シャッター10が開き、タイマーにより一.五秒してロール間隙調整用モーター25により前記と同様にロール間隙が調整される(ステップ10、11、12、13)。
また、電動機23の電流値が設定した値より大きい状態が連続する場合には、ロール間隙は、ロール間隙調整用モーター25によって連続して拡大され、磁石36と感知素子35とによる近接スイッチが作動する全開位置でその拡大が停止する。
自動手動切換スイッチ27を中立位置にすると籾摺装置4は停止する。この場合は制御盤24の電源を切るので籾供給シャッター10が閉じ、ロール間隙調整用モーター25も停まる。また、自動手動切換スイッチ27を手動側に切換えると制御盤24に設けてあるシャッター開閉スイッチ28およびロール間隙調整スイッチ29によって籾供給シャッター10およびロール間隙をそれぞれ手動により独立して操作できる。なお、電動機23の電流値は籾摺機2の制御盤24の電流計26に表示される。
第1図
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第2図
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第3図
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第4図
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第5図
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特許公報
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特許公報
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